ナポリを見たら死ぬ

南イタリア、ナポリ東洋大学の留学記。なお実際にはナポリを見ても死ぬことはありません。

イタリア美術史の試験

ナポリ東洋大学の留学記などと銘打っておきながら、自分の学生生活についてほぼ3ヶ月なにも記事を書いていなかった。

イタリアはいま、だいたいどこの大学も試験シーズンで、僕も今日は試験を受けた。1200年代後半、チマブエやジョットから、1400-1500年代のダ・ヴィンチミケランジェロに至るまでのイタリア、およびそこに関わってくるフランドル芸術の歴史を追う、美術史の授業の試験だ。

イタリアの大学の試験は基本的に、口頭で行われる。科目によっては筆記試験も行われるのだが、いずれにせよ口頭試験を受けなければならないことも多い。

ところが、未だにコロナウイルスの影響もあって、各地の大学は依然として閉鎖されたままである。そのため、授業が遠隔で行われたように、試験も当然遠隔ということになる。
ここで問題となるのが、試験の実施方法である。オリエンターレではTeamsというビデオ通話ソフトを使って、教授と学生との口頭試問が行われるのだが、しばしば一対一の口頭試問ではなくなってしまう。通常、教室で行われる試験であれば、順番に一人ずつ学生が呼ばれて試験が行われていき、待機中の学生は基本的に試験の様子を伺うことはできない。見えたとしても、内容まで聞けることはないだろう。

ところが、Teamsでは試験用のビデオ通話ルームが用意され、しばしば全員がそこに参加した状態で試験が行われていく。SkypeやLineでグループ通話をするときのことをイメージしてほしい。他の学生の試験の模様がすべて筒抜けである。遠隔試験の恩恵(?)だ。教授が配慮してくれる場合には、一人ずつ順番に個別のビデオ通話をしてくれることもあるのだが、そうでなければ試験は同席する学生の衆目に晒されることとなる。

そんなわけで、今日の美術史の試験も、全員同席型の口頭試験だった。全部で15人程度の学生がいただろうか。アルファベット順で試験が行われていくが、教授の質問も学生の回答も、教授のしかめっ面も学生の絶望もすべてがライブ配信される。まともに勉強してきた学生はスラスラと教授の問いに答えていき、教授も満足げに頷いてみせるのだが、そうでない学生は悲劇を演じることとなる。教授は疑問気な表情になるし、「それは違いますね」などと学生の回答の間違いを指摘するし、学生は学生で頭を抱えてみせたり、必死で思い出そうと視線が左上の方を向く。こうなるともう止まらない。一度まごついてしまうと取り戻すことは難しい。もちろん教授も悪魔ではないので、学生の答えを引き出そうとヒントを与えてみたりするのだが、引き出される答えがまた間違っているのである。そしてこれがすべて公開の場で行われるのだ。公開処刑と言っていい。

順番待ちの間はそんなエンターテインメントがあったわけだが、当然僕の順番も回ってくる。教授は、僕が外国人学生だからか、「何か特別得意な範囲があれば、そこから話し始めてください」と言って、僕にアドバンテージをくれた。もちろん、ネイティブの学生に対してはそんなことはしない。教授が、「ミケランジェロの彫刻の初期作品について話してください」などと質問して、学生側がそれに答えていかなければならないのである。好きなことを話していいというのはなかなかのアドバンテージだが、僕はそれを拒否した。正直に言って、全部ちゃんと勉強してきたつもりだったし、下駄を履かされるのも癪だし、威勢よく拒否することでカッコつけたいな、などと思ったからである。「特にない選びたいものもないので、教授が私に質問してください」と言い放つと、実際、教授と、臨席していたアシスタントは僕の答えに笑った。「こいつ、できる」と思わせてやった、と僕は感じた。しかし教授は、「う〜ん、それでは、先ほどの学生が答えられなかった質問をしてみましょうか」などと言い出す。「ミケランジェロの後、1500年代の後半から1600年代にかけて、遠近法はどうなっていきますか」。知らない。見事に勉強していない。即座に諦める。「申し訳ないですが、それは勉強していません」。「配布した論文にも書いてありますよ」と教授。「もちろん配布された論文は全部読みましたが、試験範囲はミケランジェロまでですから、その先の部分については答えられるほど勉強していません。ミケランジェロがある意味で遠近法に終止符を打った、ということまではわかります」とすでに泣きそうな僕。「では、他の質問に移りましょうか」と教授。カッコつけようとして思い切りカッコ悪い僕。そのあとの質問はそれなりに答えられたのだが、いかんせん出だしが酷すぎる。
そんなこんなで試験が終わると、その場で成績が言い渡される。「うん、もういいでしょう」と教授。いい点数を期待できない僕。「30点ですね」。え?満点なんだ。「ま、論文の一行一行まで全部覚えておけというのも酷でしょうし、そもそもミケランジェロの後の話は授業でもしてないですからね」。だったら最初から聞かないでくれ。心臓に悪すぎるし恥ずかしすぎる。僕がカッコつけようとしたのを見抜いた上で叩きのめすための質問だったのかな、などと勘ぐってしまう。いずれにせよ、今後なにかの試験で教授がアドバンテージをくれることがあれば、迷わず利用していきたい。

フィジカルディフェンスについて

 

www.napoli-muori.com

先日、久しぶりにアルティメットについて書いたら、コメントが寄せられたので、回答する。 

ちょっと確認したい点がいくつか。
・駆け上がり絶対止めて、インサイ裏にプレッシャー、という考え方は同じでよいか。
だとすると、近づくべきか離れるべきかの違いと7人ディフェンスなのかどうかが違いかと思います。

まず、前提として前回の記事は、設定された条件や優先度に従って、かつ「ハンドラー1の立ち位置はどこか」という問いに対する回答に絞って書いている。つまり、駆け上がりを絶対止めて、インサイ裏にプレッシャーという前提は共有している。もちろん、激しい向かい風が吹いているとか、チームとして何か特別な戦略があるとか、異なる条件があれば優先度も変わり得るし、そもそもミドル以降の身体の向きはそれでいいのかという疑問もあるが、それはまた別の話なのでここでは割愛する。

・一点目について、問2.問4の回答はどうでしょうか?というのは、離れるべき時に離れるべきと考えるのか、常に近づいているべきと考えるのか知りたいです。前者の場合、記事から読み取れないので基準を教えてほしいです。(なお、僕も止められるならくっつくべきと思いますが、ルール(下参照)と、足の速さにより、離れないと止められないと思ってます。)

離れるべき時には離れるべきと考える。が、常に一定の基準に沿ってディフェンスをすることはできない。基本的にはくっついているとして、優先順位を考慮したうえで、状況に応じて離れるべきだろう。

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https://tokyodarwin.hatenablog.com/entry/2020/05/09/121703 より

たとえば問2およびその回答については離れても構わない状況のひとつと言えるだろう。自分が裏展開を切るコースに立つことで、相手の選択肢を減らせるからだ。しかし一方で、ストーリングカウント4秒くらいからは自分の相手にくっつくだろう。一般的にこの状況ならオフェンスは最初から後ろへパスを出すことはしないが、状況が悪くなれば後ろでつなぐことを狙ってくる。そこでターンオーバーを狙いたいので、「出されてもいい」エリアに出させないようにする。
つまり、状況や戦術によって”基準”は大きく変化しうるので、一概に語ることはできない。問2の状況にしても、チームとして「ターンオーバーを狙う」のではなく「時間稼ぎをする」のであれば、最後までくっつかない、という選択肢もあり得るだろう。

・二点目について、くっつくディフェンスが、どう他の1対1に絡むのかがわかりませんでした。離すDでは、少なくともマーカーと連携しているはずです。

 

 仮に一本インサイドスロー、ブレイクスローが出たとすると、次は(おそらく)ミドル以降のディフェンスが各々1vs1の勝負をすることになる。このとき、自分が離れていてストーリングに入れなければ、後ろとの連携が全く取れていないことになる。また、問題中の離すディフェンスは、連携というよりも”責任転嫁”に陥る可能性を感じた。たとえばストーラーは「インサイドはマーカーの責任だからおれは裏だけ守ればいい」、マーカーは「裏はストーラーの責任だからおれはオープンとインサイドに少しプレッシャーをかければいい」と考えかねない。必ずしも間違った考えではないが、「ストーラーとして裏を守りつついかにインサイドにもプレッシャーをかけるか」「仮にストーリングの裏が抜かれそうになったときに、自分がハンドラーのディフェンスとして相手にくっついていることによって、スローワーにプレッシャーを与えられるだろうか」ということまで考えられて初めて、本当の意味で連携と言えるのではないか。

あと一点、体で止めるディフェンスについては調べてまして、ルールの定義集の中に「身体接触を引き起こす」の欄があります。止まってる相手に対してくっついて立つのは問題ないですが、動き始めて横をすり抜けようとした相手の前に入ることは、これに該当し、反則になるようです。だから自信持って書いたんですが解釈間違ってたら教えてください。

フィジカルディフェンス=ファール、というわけではない。まず、WFDFのルールを引用する。

17.8. ブロッキング・ファール:

17.8.1. 動いている相手チームの選手が身体接触を避けることができず、選手同士が接触してしまうようなポジションを取った場合に発生する。 (後略、JFDAの日本語訳公式ルールより引用)

 フィジカルディフェンスで問題となるのは、このルールだろう。大前提として、アルティメットは身体接触をしてはいけない、また危険なプレーをしてはいけないスポーツなので、フィジカルディフェンスをするにあたって「ぶつかりにいく」ことは避けなければならない。

一方で、ルールには下記のようにも書かれている。

12.9. プレイの結果や選手の安全に影響しない範囲の偶発的な身体接触は、2人以上の選手がある1点に向かって同時に動いた場合に起こりうる。偶発的な身体接触は可能な限り避けるべきだが、ファールとはみなされない。 

ここで問題になるのは、「選手同士が接触してしまうようなポジション」を取るというのはそもそもどういうことなのかである。なぜなら、逆に言えば、そういう動きをしなければ、「安全に影響しない範囲の偶発的な身体接触」は、必ずしも「ファールとはみなされない」のである。 

さてここで、WFDFが公開しているアルティメットのルール解釈集をあたることにする。昔はJFDAによる日本語訳が公開されていたような気がするのだが、見当たらなかったので、ここでは英語原本を引用する。なお、解釈集はこのページの"WFDF Rules of Ultimate 2017 - Official Annotations"よりダウンロードできる。

17.4 Blocking Fouls (17.8)

Note

Every player has space reserved in the direction of their movement. The size of this space depends on a lot of things (speed, direction of view, playing surface, etc) and is as large as the answer to the question "if a tree suddenly materialized in this space, could the player avoid contact (without a manoeuvre risking the health of their joints)?"

Moving in a way that this space becomes unreasonably large (running full speed with your eyes closed without checking frequently where you are going would be an extreme example) is considered reckless.

If two players have the same space reserved at the same time and contact occurs, whoever caused the conflict of reservations (i.e. whoever last moved so that their reserved space clashed with the other players reserved space - usually the player who got the reservation last) is guilty of the foul.

Players are free to move any way they like as long as this does not cause an unavoidable collision.

A collision is avoidable for a player if the player could have reacted in time and avoided it, given the circumstances involving their speed and line of sight.  

簡潔に言い換えれば、「その時々の状況に応じて、常識的に相手の動きに反応したとして、怪我なく衝突を避けられる位置取りならばブロッキングファールではない」ということと、「もしも同一のスペースに二人が突っ込んで接触が起きた場合には、あとからそのスペースに向けて動き出したプレーヤーが悪い」ということである。ここでは「そのスペースに突然木が現れたときに、プレーヤーは衝突を回避できるか」という問いに対する答えが、ある位置取りがブロッキングファールになるかならないかの目安として例示されている。

つまり、前回記事より書いているフィジカルディフェンスに関して言えば、理論的には「相手が衝突を回避し得る位置取りでコースを塞ぐことはファールではない」と言える(むしろそのような状況では相手は回避しなければならず、衝突した場合には相手のファールとなる)。また、接触は可能な限り避けるべきではあるが、二人以上の選手が同時に一点へ向かって動いたことによって偶発的に接触が起きても、必ずしもファールとはならない。ゆえに、フィジカルディフェンスも(正しくやれば)問題はない。

より実践的には、アルティメットはプレーヤー自身が審判の役割を担っているので、裏を返せば「どこからがファールか」を決める一定の裁量権もプレーヤーにあると考えられる。

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だから、この動画のフィジカルディフェンスのように、ファールか否か、そもそもファールだとしてもどちらのファールなのか意見の分かれそうな身体接触でも(個人的には極めて厳しく判定をすればむしろオフェンスファールだと思う)、プレーヤー同士の暗黙の了解が自然と形成されるものだ。こうしてビデオで繰り返し再生しても判断に悩む状況を、「目の前に木が現れたとして回避できたか」などと考えてその都度正確に判断することなど不可能だからだ。とくにハイレベルな試合になればなるほど、限られた有効なスペースを狙って駆け引きをすることになるため、必然的に身体接触も多くなる。そのとき、どこまでが「偶発的」として流せるのかは、相手とのすり合わせの結果になるだろう。

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こちらは問いと状況がやや違うが、ハンドラーの1番から3番までが全員フィジカルディフェンスをしている。質問の「動き始めて横をすり抜けようとした相手の前に入ること」がどのような状況なのかよくわからないが、仮に1番の動きだとすれば、むしろオフェンスのファールに見える。2番、3番のそれだとすれば、動いている相手対して並行移動しているだけなので当然ファールではない。(動画元:https://youtu.be/YmmZ13gfGoY

たまにはアルティメットの話をしよう

何やら、『アルティメット解体新書』なるものを書き始めた人たちがいる。元チームメイトなのだが、おそらく、コロナの影響で練習ができず、うずうずしているのだろうと思う。悪く言えば暇なのだろう。かくいうぼくも、ウイルスの感染拡大に伴うロックダウンの影響で、予定されていた大会がいくつも中止になってしまい、すっかりアルティメットから離れてしまっている。が、下の記事を読んでいて、少し刺激されるところがあったので、ぼくも一つ考えを書いてみる。

tokyodarwin.hatenablog.com

そんなわけで、今回の記事はイタリアとは何も関係ありません。ご承知おきください。

ハンドラー1のディフェンスの立ち位置はどこなのか?

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https://tokyodarwin.hatenablog.com/entry/2020/05/09/121703 より引用

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https://tokyodarwin.hatenablog.com/entry/2020/05/09/121703 より引用

(上図はぼくの著作物ではありません。前掲の記事より引用しました。問題があればご連絡ください。)

ぼくはこの”問題1”に対して、自分がハンドラー1のディフェンスだったら、”回答1”のようなディフェンスはしない。もちろん、(言い方は悪いが)スローワーが本当に下手くそだったり、ものすごい暴風が吹いていたりすれば、回答のように離れてディフェンスすることもあるだろう。ただし、”問題1”の(あいまいな)条件に従うのならば、自分のマークすべき相手を離すことはしない。(スローワーとハンドラーの距離、スタックの長さなど様々な状況に左右されるので全ての状況に当てはまることは言えない。)

なぜか。ぼくは基本的にハンドラーのディフェンスは相手に近ければ近いほどいいと思っている。もしも図のように、オープン駆け上がりを止めるために、(たとえ1メートルでも)相手から離れてついてしまうと、たしかに駆け上がりは止められるのだが:

1)間違いなくインサイドスローが出る。スローワーが「飛び抜けて上手」くなくても出る。

2)インサイドが出ると、そのあとのブレイクパスが止められない。インサイドスローが出れば、自分はストーリングに入らなければならないが、そもそも離して付いていたので追いつくまでに時間がかかる。するとストーラーとしてブレイクスローを止めることは困難を極めるし、ミドル以降のディフェンスをしているチームメイトにしても、当然オープン側に付いているのでブレイクスローをカットすることはできない。

3)というかそもそもターンオーバーをおこせない

なるほどたしかに、優先度的にはオープン駆け上がりのほうがディフェンスの必要性は高い。だがそこだけを守れていればいいのか、ということだ。この状況で駆け上がりをされることは、ほとんど即死を意味するが、一方で駆け上がりを防いだ代わりにインサイドスローを投げられてしまっては、なんとか致命傷ですんだ、くらいのものでしかない。結局死ぬ。

それにそもそも、”問題1”のように、ハメ側のサイドライン際にディスクがあるような状況は、ディフェンスとして勝負のかけどころじゃないのかと思う。”詰アルティメット”というくらいなのだから、相手を詰んだ状態にしたいわけで、だとすればインサイドに比較的安易な逃げ道・打開策を提供するわけにはいかないのだ。なので、ぼくであれば:

1)ハンドラー1にくっつく。「密です」と言われないように文字通り2ミリくらいは離れておく。

2)その際、自分の身体でオープン駆け上がりのコースを消す。どんなに相手の足が早くても、自分の身体をすり抜けることはできない。

3)そうしてインサイドスロー・またはブレイクスローにプレッシャーをかけていく。ここでディスクを落とす。落とせなくてもすぐにストーリングに入り次のスローは投げさせない。

ぼくが言いたいのはマンツーマンディフェンスは1vs1であり7vs7でもあるということ

実際のところチームの方針やら目指すレベルなどにもよるので一概には言えない。が、本気でターンオーバーを狙っている状態で、チームメイトが上図のように離してディフェンスしていたらぼくは「あいつ疲れてんのかな」と思うだろうし、「いや別に疲れてないよ」などと言われてしまったらその場に崩れ落ちるだろう。なぜなら、極端に悪く言えばサボっているようにしか見えないからだ。離してディフェンスをするのは楽だが、肝心なところが止められない。たしかに、ストーラーがいるからインサイドや裏は出づらい・出ないはず、だからおれはオープン駆け上がりを止めればいい、という考えは間違っていない。しかし、これではマンツーマンディフェンスの1vs1の側面に甘えて、7vs7をサボっていることになる。おれが守るのはここ、あいつが守るのはここ、それぞれ自分の絶対に守るべきところを守ればいい、という考え方はよろしくない。自分が守るべきところを絶対に守りつつ、自分の守れる範囲を拡大していく・味方の尻を拭えるようにするのがマンツーマンディフェンスの正しい考え方だ。たしかに、あいつがあそこを守っているから、おれの守るべきところはここ、というのはマンツーマンディフェンス基本的な考え方だが、各人が最小限の範囲だけを守るだけのでなく、最大限の範囲を守るようにすることで、1vs1が7vs7になる。あいつはあそこ、だからおれはここ、という態度は、7vs7の役割分担をしているように見えて、実はただの1vs1の集まりにすぎなかったりする。

 

イタリア封鎖生活三十数日目の部屋

今週のお題「わたしの部屋」

 

昨年、仕事を辞めてまでわざわざイタリアの大学院に入学したというのに、半年足らずで新型コロナウイルスの影響で何もかもが閉鎖され、どこへ行くこともできず、大学は通信授業となり、電車で半時間ほどのところに住んでいる恋人と遠距離恋愛をしているのは、全くもって理不尽と言わざるを得ない。意味がわからない。こうなると収入の減少だとかではなくて何でもいいから誰か見舞金として30万円支給してくれという気持ちである。

ともかくロックダウンが発動されて以来、三日に一度ほどスーパーへ買い出しへ行くほかはどこへ行くこともできないので、必然的に家にいる時間が格段に増えた。ぼくの住む部屋は、ナポリの歴史地区のパラッツォの一階にある。まあ、イタリアによくありがちな中庭のあるマンションだ。パラッツォの入り口の扉をくぐり、車が5台ほど停められるくらいの大きさの中庭の通った先の隅に、僕の部屋がある。詳しいことはわからないが、もともとは倉庫か何かだったのではないかと思う。そもそも、一階にあると言っても、まず玄関が二段くらい低い、奥まったところにあるし、何よりまともな窓がないので人が住むことが当初から想定されていたとは到底思えない。一応、玄関の扉に申し訳程度の窓がはめ込まれているのだが、奥まった場所にあるので外からの光はろくに届かない。

封鎖生活でまともな窓がないのはじつにつらい。封鎖生活という状態それだけでも息が詰まるのに、部屋の換気すらまともにできない。一応、部屋には換気扇がついているのだが、うるさいだけで効果がない。玄関の扉にはめ込まれている窓は開けられるものの、小さいのであまり効果がない。そんなわけで、ぼくは換気のためにしばしば玄関を開け放つことになる。すると外の新鮮な空気とともにハエまで入り込んでくる。網戸が欲しい人生だった。

さてぼくの部屋は窓がないにしても、中は広々としていて悪くない。全部で50平米くらいの大きさだ。Googleによると50平米は27畳ほどであるらしい。とはいえ、27畳の大部屋があるわけではなく、ロフトのある二階建て構造になっている。

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しかしロフトといってもほとんど独立した二階のようなものだし、上部も広々としているので、日本のアパートでイメージするようなロフトほど狭くはない。ロフト部分が寝室とバスルームで、一階部分がキッチン兼リビングと言ったところか。

そしてぼくの部屋の最大の魅力はスーパーマンがいることである。

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入居当初からスーパーマンはここにいた。顔をはめて遊ぶことができるお楽しみ仕様だ。使ったことはないし、なぜここにあるのかもわからない。ちなみにこのスーパーマンの裏側にはもう一枚ベニヤ板があり、そちらにはスーパーウーマンが描かれている。同じく顔をはめて楽しめる仕様だが、使ったことはない。誰か引き取りに来てくれ。

ナポリでは卒業パーティーを開くと火炎放射器を持ったカラビニエリを送り込まれる

video.corriere.it

ナポリを含むカンパニア州でもCOVID-19の感染者はジワジワと増えている。3月28日頃に1,500人、4月初頭には3,000人の感染者を数えることになる、という予測も出ている。

そのためカンパニア州知事のデ・ルーカ氏は抑え込みに必死だ。もともと、散歩の禁止出前サービスの中止など、国レベルでの規制よりさらに一歩踏み込んだ州知事令を出して対応にあたってきたデ・ルーカ氏だが、ついにキレた。そもそも、イタリア北部が封鎖されるという話が出たとき、少なからぬ人々が南に脱出したことや、さらには、感染防止のための責任ある行動が叫ばれ始めていたのに、飲み会に興じる若者がいたことを無責任な行動として非難し、そうした無責任な行動が感染を拡大させているのだ、と知事は言う。まあ、たしかに、イタリアでいまいち感染拡大に歯止めがかかっていない感じがするのは、未だに好き勝手に行動している人々がいるからなのだろうな、という気はする。

しかしすごいのはデ・ルーカ知事の毅然とした態度である。それは知事がFacebookで発信したライブ配信でのメッセージであった。曰く、ちょうど今は大学の卒業シーズンなので、知事の耳にも「若者が卒業パーティーをやりたがっている」などという知らせが届くそうだ。「カラビニエリ(軍警察)を送り込むぞ」、と知事は言う。そしてさらに、火炎放射器を持たせて送り込む」と言い切るのである。「卒業パーティー2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月後にでもやればいい。ありえない」。知事の本気度が伺える。でもここまで言わなきゃいけないってどうなんだ。