ナポリを見たら死ぬ

南イタリア、ナポリ東洋大学の留学記。なお実際にはナポリを見ても死ぬことはありません。

日本人留学生

昨日から大学で開講されている外国人向けのイタリア語の授業に参加している。とくに単位がもらえたりするわけではないけれど、留学生なら無料で受講できるので、参加しない手はないだろう。

そのイタリア語のクラスに、日本人の女子学生がいた。話を聞いてみると、なんと僕の母校の学生だった。直接は知らないが後輩だ。いまは3年時で、派遣留学生として我らがナポリ東洋大学に来ているそうだ。話していて、もう何年も前のことだが、自分自身が同じように初めて留学していたときのことを思い出して懐かしくなった。まあ、僕の場合は派遣留学でもなかったし、大学ではなくて語学学校に通っていただけだったけれども。

ところでイタリア語の授業はレベルごとにクラス分けがあって、僕はC1レベルのクラスに所属している。C1というのは、ヨーロッパ言語共通参照枠とかCEFRとか言ったりする枠組みにおけるレベルのことで、6段階のうち5段階目のレベルにあたる。日本人の大好きなTOEICでいうと950点くらいがC1レベルにあたるらしい。ちなみに、ヨーロッパの大学に入学しようとするとたいてい、最低でも4段階目のB2レベルが求められる。

B2レベルまでのクラスは文法の勉強をしたりするのだけれど、C1レベルになると実践に重きが置かれるので、会話や討論やグループワークが中心になってくる。それで、僕はたまたまその日本人女子学生とペアになったのだが、ほとんど発言してくれないし、そもそも声が小さすぎてほとんど聞こえない。もちろんそれでは話にならないので、「どう思う?」とか「ごめん、聞き取れなかった」とか言ったりして発言を促したら、「私、自分に自信がないんです」「一緒にきた留学生はB1とかB2とか下のレベルにいるのに、私だけなぜか実力もないのにC1なんです」などと弁明されてしまった。いや、わかるよ!気持ちはわかる!わかるんだけどそういう泣き言みたいなのは求めてないんだよなぁ。というかそれをイタリア語で言えてるし大丈夫なんじゃない?ともかくあわてて、「いやいやそんなことないよ、十分実力あるって!」などと励ましてみたりもしたけれど、結局埒が明かないのでペアワークはほとんど僕が勝手にやってしまった。悪いことをしたと思う。それとも、僕のやり方が悪くて自信を打ち砕いてしまったんだろうか?

結局、授業後に日本語で話をしたら、「今の自分の実力にはレベルが合ってないと思うからクラスを変えてもらおうと思っている」というようなことを言っていた。僕には実力というよりも気の持ちようの問題に思えたし、僕の後輩ということもあって、老婆心でそのまま思っていることを伝えたけれど、まあたぶんクラスを変えてしまうんだろうな。「発信力が皆無だから」とか言っていたけれど、当てずっぽうで適当に何かしら言っとけばいいのに。僕なんかはそうしてる。必然的にあまり整理せずに話し始めるから、文法的に間違えたり、そもそも自分でも何を言っているのかよくわからなかったりするけれど、そんなことは気にしてはいけない。というか、(もちろん例外は大いにあるが)一般的にヨーロッパの学生はよく発言するので、黙っていると周囲で勝手に話が進んでいってしまう。僕はそれがムカつくのでとりあえず口を挟みたい。大人しくしていると周囲の都合で進んでしまうので、口を挟むことでとりあえず主導権は握らせない。これが全て。語学力上達のために間違っていても自信を持って話すとかなんとか意識高い系っぽいたいそうな目的があるわけじゃない。ムカつくし負けたくないだけ。

ところであまり関係ないけれど、意識高い系の留学生って日本人断ちしようとするよね?「〇〇語習得のために日本人とは関わらない」みたいなやつ。後輩の話によると、今年イタリアに来ている留学生にもそういう人がいるらしい。僕としては日本人と関わったところで言語習得に影響が出るとも思わないし、というか日本人を避けるために余計なストレスを溜めて辛くなりそうだと思うがなぁ。まあ、本人の勝手だから、その点については口を挟むつもりはないけど。余計なことには口を挟まない、これも大事だね。