ナポリを見たら死ぬ

南イタリア、ナポリ東洋大学の留学記。なお実際にはナポリを見ても死ぬことはありません。

大晦日にナポリのアダルト映画館へ行ってきた

 

明けましておめでとう。前回の記事から2週間が経ち、メリークリスマスも言わないうちに正月三が日もすでに終わってしまったが、明けましておめでとう。年末年始にかけて友人がナポリに遊びに来てくれたので、ナポリ近郊の観光をしたり、それからギリシャ旅行をしたりといろいろと楽しく過ごしていたのだが、それゆえにブログをなおざりにしてしまった。

ともかく、僕は友人とともに、大晦日アダルト映画館へ行ってきた。一応弁明しておくが、どうしても行きたくて行ったわけではない。大晦日でどこも店は開いていないし、友人は数度目のナポリ観光だから見どころは制覇しているし、住んでいる僕にとってはなおさら、今さら観光すべきところもない。

しかし大晦日の昼下がり、年越しイベントまではまだ時間がある。暇つぶしのコーヒーを済ませた僕らは途方に暮れていた。「どっか面白いところないの?」と友人が僕に聞く。「う〜ん、入ったことはないけど18禁の映画館があるよ」。僕たちは映画館に足を運ぶことにした。

映画館の場所

もしかするとナポリ観光の折にこの映画館を訪れたいという人がいるかもしれないので、ここに地図を貼っておく。メトロのToledo駅から歩いて2分くらいのところにある、"Agorà"という映画館だ。大晦日アゴという名前のこの世の終わりみたいな18禁映画館に踏み入れた翌日、僕はアテネアゴラというヨーロッパ世界の始まりの地に立つことになるのだが、アテネの素晴らしさについてはまた別の機会に触れよう。

 

映画館ルポ

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外観

映画館の外観はまるでいかがわしさを感じさせない。むしろ、ファシズム建築のビルの一階部分にあるので、極めて無機質な印象を受ける。しかし一度入り口のドアをくぐると薄暗いチケット売り場が大量のポルノ映画のポスターと共に現れる。いかがわしいことこの上ない。

 

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Un capodanno del cazzo

チケットは6ユーロ。毎朝9時半から23時まで営業している。その間、アダルト映画がノンストップ上映され続けるので、居ようと思えば6ユーロで一日過ごせる。僕は30分も持たずに逃げ出したけど。

すごいのはチケットを買ったときにもらったレシートだ。”Un capodanno del cazzo"などと書かれていて、うまく訳せないのだが、ファッキン・ニューイヤーのような意味になる。大真面目なレシートにこんな字面が登場するのがおもしろい。

ともかくチケットを買うとホールのある地下へと案内される。ここから空気が変わる。僕と友人はそれまでヘラヘラしていたのだが、地下へ降りた瞬間に"殺気"みたいなものを感じて言葉を失った。極めて薄暗い空間なのだが、2〜3人の男たちが徘徊しながら明らかにジロジロと見てくるのがわかるし、アダルトビデオの爆音が響いている。廊下を挟んでいくつか部屋があり、それぞれでビデオが上映されているのだ。ただし部屋を区切る扉のようなものがないので、各部屋のビデオの音がダダ漏れになっていてやかましくてかなわない。

興味本位で僕も各部屋を徘徊してみたのだが、その間も明らかな視線を感じ続けていた。というか「あいつは中国人か?」などと囁く声まで聞こえてきて様子がおかしい。視線が鬱陶しいので適当な部屋に逃げ込んだら、そこではゲイビデオが上映されていた。「おぉ〜ちゃんとゲイ向けの上映もあるのか」と感心したのも束の間、よく見ると暗闇のなかで鼻息を荒くしたおじいさんが自慰行為に耽っていた。僕は慌てて部屋を出た。

気を取り直してヘテロセクシュアルなビデオが上映されている部屋に入り、1990年代くらいの古いビデオを真顔で観ていると、僕の近くに白髪交じりのおじさんが腰掛けた。そしておもむろにズボンを下ろし、一物をいじり始めた。僕はもう驚かない。この映画館はたぶんそういう場所なんだろうと納得し始めていた。古すぎるビデオ、隣で自慰するおっさんを交互に真顔で見ていると、僕の友人が「早くここから出よう」と鬼気迫った様子で声をかけてきた。「なんか知らないおっさんに触られた」というのである。僕としては隣のおじさんの行く末を見たい気持ちもあったのだが、しかたがないので映画館を後にした。今思えば「深淵を覗くとき」云々というニーチェの言葉そのものの状態だったのかもしれない。あのままあの場に残っていたら僕も何をしでかしたかわからない。