ナポリを見たら死ぬ

南イタリア、ナポリ東洋大学の留学記。なお実際にはナポリを見ても死ぬことはありません。

"De amico mortuo" 『死せる友について』

Ablatus mihi Crispus est, amici,

pro quo si pretium dari liceret,

nostros dividerem libenter annos.

Nunc pars optima me mei reliquit,

Crispus, praesidium meum, voluptas,

pectus, delicias: nihil sine illo

laetum mens mea iam putabit esse.

Consumptus male debilisque vivam:

Plus quam dimidium mei recessit.

私のクリスプスが奪われた、友人たちよ、

もし、彼に値段がつけられるのなら、

喜んで私の寿命を分け与えるだろう。

今や私の最も尊いものが私を置いていってしまった。

クリスプス、私の拠り所、喜び、

心、大切なもの――あの人がいなければ

私の精神はもう何も喜べまい。

うちひしがれて、弱々しく生きていく――

私の半分以上が失われてしまった。

(Anth. 445)

最近全く更新していなかったが、今日、ちょっといい詩に出会ったので、更新がてら書き残しておく。5世紀から10世紀くらいに書かれたと思われる、著者不詳の詩である。なお、題名には「友人」とあるが、(とくに現代の我々の感覚からすると)かなり親密な表現であるので、単なる友情以上のものがあったのかもしれない。そのせいか、私の読んでいるテクストに付属している英訳では、voluptas(ここでは「喜び」とした)が desire となっていた。少し、性的な意味が強すぎるような気がする。