ナポリを見たら死ぬ

南イタリア、ナポリ東洋大学の留学記。なお実際にはナポリを見ても死ぬことはありません。

『ガリア戦記』を読む

あまりにも有名なので説明するまでもないと思うが、『ガリア戦記』はローマの軍人だったユリウス・カエサルが、ガリア戦争への遠征記録を自らの手で書き記したものである。3月からラテン文学の授業があるので、最近おろそかにしていたラテン語に触れておくために、これを手にとったわけだ。

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イタリアにはRizzoliという出版社があり、そこが出しているBURという文庫シリーズで各種古典文学を安く手に入れることができる。ほかにも似たような文庫はあるのだが、僕の持っている『ガリア戦記』はBURのそれである。そしてラテン語や古典ギリシャ語の作品は対訳になっているものが多い。写真も、左のページがラテン語、右がそのイタリア語訳になっている。これが僕のような学習者にとっては便利で、原文で躓いたり理解に自信のないときはすぐに対訳を参照できるのがありがたい。まあ、日本の古典も原文と現代語訳が対訳になっていたりするので、似たようなものだろう。しかし油断していると、いつの間にかずっと対訳だけを読んでいるということになったりもするので気をつけなければいけない。

とはいえカエサルラテン語は比較的易しいので、そこまで困ることはない。ラテン文学は紀元前1世紀から紀元後1世紀がおおまかに言って黄金時代で、古典ラテン語で書かれた文学の最盛期とされるのだが、この時代のヴェルギリウスオウィディウスキケローなどと比べれば、同時代のカエサルは一番読みやすい部類なのである。そもそも散文で書かれているのでわかりやすいということもあるが、背景がわりと明確であることも読解を容易にしてくれる。つまり、『ガリア戦記』などはカエサルの戦争の記録なので、その背景を踏まえると必要な語彙も比較的限られてくる。そんなわけで、高校などでラテン語を学ぶ生徒が最初に読まされるラテン語作品はしばしばカエサルが使われるらしい。カリキュラムについて、詳しいことはわからないが。

ともかく、実際に読んでみると、『ガリア戦記』はわかりやすい。まず、主語がよくわからなければとりあえずカエサルが主語だろうと推測して読めばたいていなんとかなる。単語の意味がわからなくても、殺戮とか城塞とか戦争に関わる物騒な単語だと文脈から想像がつきやすい。その文脈にしても、ガリア人の〇〇族がカエサルのもとへやってきて□□と言った、カエサルはXXと返答した、というようにある種定型的なものが多い。わりとよく敵を撃破したり撃破されたり、人質をとったりとられたりしている。そういう意味でカエサルは読みやすい。おすすめです。