上の記事を書いたあと、無事に住居に関する書類を受け取ることができた。この記事ではそれが結果的に無事ではなかったということを書くのだが。
ともかくまさか問題があると思わなかった僕は、受け取った書類と、他の必要書類を揃えて昨日、ビザ申請のために大使館へと足を運んだのである。
大使館ビザセクション
イタリア大使館でのビザ申請は全て予約制になっている。予約の時間通りに僕が大使館のビザセクションを訪れると、もうすでに15人ばかりが待機していた。窓口は3つあるのに、1つしか開いていない。イタリアではよくあること。
こりゃあ予約をしたのに待たされそうだなと思ったところで、とつぜん窓口の女性がアナウンスを始める。
「ではビザお受け取りの方、お越しください」
このアナウンスが終わらないうちに、一斉に弾かれたように椅子から立ち上がり、窓口に人々が殺到する。何を焦っているのかよくわからないが、どうやらビザ申請に来た人と受け取りに来た人とが混ざっているらしい。
窓口の女性は10分程度かけて数名にできあがったビザを渡す。それでも行列の半分も捌けていない。ここでまたとつぜんのアナウンスが発される。
「では申請の方お呼びしますので、受け取りの方は座ってお待ちください」
わかったぞ。一つの窓口で申請者と受領者の両方を交互に捌いているのだ。
ビザを受け取れなかった行列は解散する。ビザ申請者の手続きには一人あたり10分近くかかる。その手続きが行われる間にも、ビザ受領のためにちらほらと人が入ってくる。いつまでたっても全体的な人の数が変わらない。そしてようやく申請者が2人捌かれたところで、また案内がある。
「では受け取りの方、お越しください」
またしてもほぼ全員が窓口に駆けつける。なぜかつい5分前に入ってきたばかりの人が一番乗りしてしまう。僕が入ってきた時点で待っていた人は少なくともすでに30分は待っているのに。秩序もなにもない。申請は予約制なのに受け取りは予約不要なのである。ともかく僕は脚力を鍛えておこうと思った。
ビザ申請
そんなこんなでようやく僕の申請手続きの順番が回ってくる。結局、予約したのに1時間近く待たされてしまった。僕は申請に必要な書類をまとめたクリアファイルを差し出す。係の女性がひとつひとつ書類に目を通していく。僕は平静を装っているが、デュエルが始まる予感がしていた。
「あの、これって」ほら来たぞ。デュエルスタンバイ!「この、住居の受入書類ですけど、PIZZA HOSTELっていうのは大学の寮なんですか?」
やっぱりそこ突っ込むよねぇ〜〜〜!僕も怪しいなぁと思ってたんだよ!だってそもそも大学に寮の斡旋してくれないか頼んでみたら、ホステルに回されるんだもん。意味不明だよね。おまけにピッツァホステルとかいう取ってつけたような名前だし。でもここで弱みを見せたら申請が却下されてしまう!自信満々で行くのがコツだ!
「はい、そうです」。僕は断言する。何も知らないのだけれど断言する。
「それで、この女性がその寮の職員なんですか?」と言って、係の女性が付属書類を見せてくる。たぶんそうなんだけど僕もよくわからないんだよ。それはMarilisaという女性の身分証明書なのだけれど、実際彼女が何者なのかは僕にもわからない。僕は受け入れ書類とその身分証明書をホステルから受け取ったので、たぶんホステルの職員かなんかなのだろう。あくまで推測の域を出ないけど。
「はい、そうです。間違いありません」。あくまで推測でも確定的に断言するのがコツ。
「ふ〜〜〜んそうですか、わかりました」。わかってもらえた。
発行手続き保留
住居関連の書類で少し突っ込まれたものの、それ以外はつつがなく進み、無事申請は受領され、2週間後にビザを受け取りに来るように案内された僕。これでようやく万事うまく行きそうだと思って、ビザ受け取り予定日の翌日に出発するフライトも確保した。あとは出発に向けて粛々と準備を進めるだけだ、などと思っていた矢先、電話がかかってくる。
「もしもし、イタリア大使館ビザセクションの者なんですが、Romoloさん、ビザの件なんですけどね、私昨日なんとなく受理してしまったんですけど、上司から認められないと言われてしまったんですね」。なんとなくって言った?
「というのも、受け入れ書類に書いてあるサインと、女性の身分証明書のサインが違うんですね。恐らく女性がこのPIZZA HOSTELの責任者なんだと思いますけど、これじゃあ客観的にわからないんですよね。受け入れ者、まあこの場合はホステルということだと思いますけど、そのサインを確認するために身分証明書を添付してもらっているんですけどね、これじゃあ一致していないから認められない、ということなんですよ」。嘘だろ。サインが一致してないなんて。見落としてたよ。というか、一応大学経由で斡旋されたところだから味方だと思っていたのに、まさかの同士討ち。敵は大使館だけではなかった。
「ですから、書類を再提出していただけますか?それまで一旦、手続きは保留させていただきます」
はい、どうなる俺。もともとの受け取り予定日の翌日のフライト、乗れるのか?