ナポリを見たら死ぬ

南イタリア、ナポリ東洋大学の留学記。なお実際にはナポリを見ても死ぬことはありません。

Mensa Occupata、あるいは占拠された大学食堂

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Mensa Occupata

ナポリにある一番大きな大学は、フェデリコ二世・ナポリ大学という。そのナポリ大学や、ぼくの通うナポリ東洋大学の建物が集まっている、Mezzocannoneという通りがあるのだが、ここは「活動家の聖地」だとかいう話を聞いた。正直なところ全く知らなかったし、ほとんど毎日のように通っていながら、いままで気にもかけていなかった。ところがたしかに、通りに面した建物の壁にそれらしいメッセージが記されている。冒頭写真のメッセージを訳す。

階級対階級……勝利する時まで

敵は経営者、

ファシストと投機家だ

肌の色が違う者ではない

Mensa Occupata

 なかなか刺激的なメッセージだが、ぼくの目を引いたのは"Mensa Occupata"である。訳すと「被占拠食堂」という意味になる。気になったので少しばかり調べてみると、興味深い経緯がわかった。

もともと、ここは大学食堂として利用されていて、このあたりの大学に通う学生らが安く食事にありつけるようになっていた。1990年代の終わりには毎日1万食が提供されていたそうだ。ところが2003年に閉鎖されてしまい、その3年後から400万ユーロの公的資金を投入した改修工事が始まったのだが、いつまで経っても営業が再開されないので、2012年になって業を煮やしたナポリ大学の学生が占拠して、翌年から自主的に営業を始めたのだそうだ。(ソース:Mezzocannone a Napoli: la mensa occupata che funziona | Dissapore)ここ最近は毎週水曜日の昼に営業していて、誰でも集まって1.5ユーロでパスタなどが食べられるようである。また運動場としても利用されている様子。今度、覗きに行ってみようか。

しかし意味がわからないのは、ほとんど丸10年かけても営業が再開されなかったことだ。400万ユーロもかけているのに。まあ、どうせ関係諸団体がまともに機能していなかったんだろうが。そしてすばらしいのが、イタリア人の行動力である。勝手に食堂を占拠してしまうのが良いか悪いかは別として、自らの能力でなんとか問題を解決してしまう、そういう美徳がイタリアにはある。イタリア語にはarrangiarsiという動詞があって、まさにこうした状況下で「自らの力でなんとか問題を解決したり、困難を切り抜けたりする」ことを意味する 。イタリアではしばしば使われる、イタリア人が誇る美徳を表す言葉だ。そしてこのarrangiarsiの力こそが、ぼくがイタリアを好きな理由の一つでもある。