ナポリを見たら死ぬ

南イタリア、ナポリ東洋大学の留学記。なお実際にはナポリを見ても死ぬことはありません。

イタリア人のアルティメット英語力

今日、ぼくはボローニャでフリスビーを投げてきた。

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どういうことかと言うと、アルティメットというスポーツのイタリア代表選考会があったのである。来年の世界選手権に向けて、代表選抜を行うとともに、外部コーチを招いてレベルの底上げをはかるイベントだ。一応、ぼくにも代表資格があるのと、悲しいことにナポリにはアルティメットチームが存在しないので、万一の可能性にかけるのと単純にアルティメットがしたいという気持ちで参加してきたのである。

さて外部コーチであるが、アルティメットフリスビー界という極めて狭い世界では有名な、Jimmy Mickleというアメリカ人を始めとする豪華キャストらが招かれた。「憧れのスーパースターたちに教えてもらえる」ということもあって、今回の代表選考会は普段よりも多くの選手が集まっていた。

ところが、外部コーチ陣はイタリア語話者ではないので、当然のように英語で全てが進行していく。開会の挨拶から、トレーニングの説明、指示などすべてが英語なのだ。そして残念なことにイタリア人は英語が苦手だ。まあ、日本ほどではないが、イタリアもかなり英語が通じない。ぼくも日常生活でときどき英語で話しかけられることがあるのだが、たいてい、頼むから無理はしないでくれと心配になるほどの英語力を披露されてしまう。一度、スーパーのレジで"Do you need BUSTA?"と聞かれたこともある。Bustaはイタリア語でレジ袋のことだ。いや、ぼくはイタリア語がわかるからいいけど。もちろん、好意で英語を使ってくれているのは理解できるが、途中からイタリア語になっている。

そんなわけで、イタリア人の平均的な英語力にはあまり期待ができない。しかしそんなことは気にもかけずにコーチたちは英語で話し続ける。コーチたちによるトレーニングメニューの説明のさなか、一部参加者に明らかな動揺が見え始めた。「何もわからんわ」などと囁く声が聞こえてくるのである。それでもこうした正直者には、周囲の優しい人が通訳をしてあげるのでなんとかなる。やっぱりイタリア人は強いなぁ、などとぼくが感心しているとトレーニングの説明が終わり、メニューを実践する段になる。その瞬間に少なからぬ参加者たちが指示と全く違う動きをし始める。一瞬、ぼくの理解が間違っていたのかと不安になるほどだ。結局、まるで完璧に理解したかのように頷いていた連中も、まともにわかっていなかったのだ。あるいはそもそも話を聞いていないのである。何をしにきたんだ君らは。おもしろい。イタリアは本当におもしろい。